にわか考古学ファンの独り言(弥生時代その②)

 弥生人のコメの炊き方   

 前回で、弥生人縄文時代と同じように、肉や魚介、木の実、山菜、果実類など、四季折々の食物をバランスよく食べていたという話をしました。とはいえ、弥生時代といえば、やはり気になるのはお米のことです。現代人の多くが食べるお米は精米した白米ですが、健康のため、あるいはより米の栄養を摂取するために、糠がついたままの玄米で食べる人もいます。玄米はほんのり香ばしくて美味しいですが、同様に弥生人も玄米に近い状態で食べていたと考えられます。

 もしかしたら、十分な収穫量がない時期にはお粥にしたり、時には他の雑穀も混ぜて雑炊のようにしてかさましの方法がとられることもあったかもしれません。また、吹きこぼれるまで強火で煮て、芯まで火入れする炊き方をしたり、煮た後に煮汁を取ったりと、さまざまな調理方法で米を食べていたようです。ちなみに、取った煮汁も余すことなく使っていたはずです。これらは、土器の表面の吹きこぼれの痕やススの付き方を観察したり、土器の内面のコゲを観察することでわかってきました。ススとコゲの観察で、当時の料理方法が復元されています。

 弥生のコメはどんなコメ?

 好みもありますが、現代人が「美味しい!」と思うコメは、炊いたときにモチっとして、ピカっと艶があるものが良いコメだという人が多いのではないでしょうか。では、弥生時代から、すでにそのようなモチモチのコメだったのでしょうか。

 ここに面白い研究があります。南関東弥生時代に関して広前大学人文社会学部の研究チームが、弥生時代後期の集落である「大場富士塚遺跡(横浜市青葉区)」から見つかった炭化したコメをDNA分析したところ、この品種が褐色皮種の熱帯ジャポニカだと推定されました。熱帯ジャポニカとは、現在の東南アジアで食べられる、今の日本で食べられているコメよりも粘り気が少ない、比較的パラパラとしたコメを指します。このコメをどうやって食べていたかというと、汁気の多いおかずと合わせて食べていたのではないかと思われます。パラっとしたご飯に、汁気の多いカレーやおかずを混ぜ合わせながら食べるスタイルに近かったのかもしれません。ただ、事実は分かっていません。また、昔のコメというと黒米や赤米をイメージする人も多いかと思いますが、こちらも、確かなことは分かっていません。

 最後に、今までの分析結果から、品種の異なる複数の種類のコメを一緒に栽培することで、悪天候などによる不作のリスクを最小限にとどめるための戦略もなされていたと考えられています。このリスクヘッジ戦略を知ると、弥生人たちのコメに対する並々ならぬ思いを感じずにはいられません。自分たちの生存がかかった大切な食料なのですから、全精力と知恵と経験をかけて栽培し、そして、美味しく食べようと努力したのだと思われます。

(参考文献)

譽田亜紀子「コメの炊き方いろいろ」『知られざる弥生ライフ』誠文堂新光社2019年