にわか考古学ファンの独り言(弥生時代その②)

 祭祀の道具

 弥生時代には木製品で作られた祭祀の道具がたくさん見つかっています。前回の鳥形木製品もその一例ですが、中には「木偶」と呼ばれる人形もありました。縄文時代の人形である土偶の多くが、妊娠した女性を表現していると言われますが、木偶は男女ペアで作られています。稲作は男女が力を合わせて作業に取り組むことから、男女の祖霊を表現しているとも、男女の和合を表しているとも言われています。

 縄文時代の代表的な祭祀の道具に、男性器を石で模して作った石棒があります。弥生時代には、よりリアルな男根形木製品が作られるようになりました。縄文的な再生や豊穣を祈る道具とも、衰えた稲を蘇生させるための祭りの道具とも考えられています。

 木製品の中には箱形の琴もありました。島根県出雲市姫原西遺跡から見つかった琴には三日月と円形の模様が施されています。月は再生のシンボルとされ、その満ち(円形)欠け(三日月を表現した琴で音を鳴らしながら再生を祈ったのかもしれません。

 音が出る祭祀具として、もっとも代表的なものは「銅鐸」です。主に西日本の限られた遺跡から見つかっています。もともと中国や朝鮮半島で作られていた青銅製の鈴や鐸を弥生人が受け入れ、独自にアレンジし農耕の祭りの道具にしたのです。自然界には存在しない、高く澄んだ「キーン」という金属音に、弥生人は衝撃を受けたと思われます。人智を超えた存在が奏でる音のようにも感じられたかもしれません。銅鐸は次第に大型化して鳴らして使うには不向きな構造になっていくものもありました。

 青銅で作られた祭祀の道具には銅剣や銅戈、銅矛と言われる武器もありました。当初は武器として渡来しましたが、のちに大型化し、祭祀の道具になったと考えられます。祭祀の場でそれらを使って模擬戦を行い、方策か凶作かを占ったと考えられます。

(参考文献)

譽田亜紀子「弥生人の祈り」『知られざる弥生ライフ』誠文堂新光社2019年