にわか考古学ファンの独り言(旧石器時代)

 旧石器時代の概要

 「日本で一番長かった時代は」と問えば、ほとんどの人は縄文時代だと答えると思います。たしかに縄文時代は1万年以上続いたことが考古学的調査からわかっています。しかし実は違います。正解は2万5000年以上続いた旧石器時代です。およそ4万年前から1万5000年前のまでのもっとも古い時代で、日本の歴史の半分以上は旧石器時代が占めている計算になります。

 それほど長く続いた時代にもかかわらず、わかっていることがいちばん少ない時代です。でも、基本的には次のような時代であったといえます。

 まず、アイス・エイジ、つまり氷河時代にあたります。

    マンモス・エイジ、今では絶滅した大型哺乳類が地上を闊歩した時代でした。

    ストーン・エイジ、石器時代で、土器が使われることはありませんでした。

    ノマディック・エイジ、人びとは現在のように定住せず、遊動(ノマディッ      

               ク)生活を送った時代でした。

 北海道から沖縄まで、日本列島各地には現在1万か所以上の旧石器時代遺跡が確認されています。そのほとんどが、開けた場所にある開地遺跡で、洞窟や岩陰などは居住の場としてはごくまれです。

 旧石器時代の遺跡は、例えば東京都野川流域のように小河川の流域に沿った小さな丘の突端に点々と残されています。そこには湧水点もしばしばあります。この場所が選ばれたのは、生活に必要な水があり、狩りの対象となる動物が集まる水吞場となったからだとも、川沿いが遊動生活に好都合だったからだともいわれています。ただこのキャンプ地には、縄文時代のように、地面を深く掘り炉を設けたしっかりした竪穴住居は作られませんでした。

 こうした遺跡とは別に、黒曜石を産出する北海道遠軽町白滝遺跡や長野県和田峠の男女倉遺跡群、サヌカイトのある二上山北麓遺跡群などのように、石器の材料となる石材原産地に残された遺跡もあります。野川流域のような石器や石材の消費地遺跡とは性格が異なる原産地遺跡といえます。

 旧石器遺跡から見つかるのは、たいてい礫や石器を作った時に出た石クズばかりです。運がよければ「ナイフ形石器」など石器そのものが見つかることがありますが、石器以外のものに当たることはめったにありません。”万”という時間が木や骨を分解してしまったからです。唯一、骨を磨いたやりが岩手県花泉遺跡から発見されています。

 旧石器時代がどんな時代であったのかは、まだよく解っていません。解明されるのはこれからの研究にかかっています。

(参考文献)

堤隆「ようこそ旧跡時代へ」『旧石器時代ガイドブック』新泉社2009年