にわか考古学ファンの独り言(縄文時代その②)

 縄文人の素顔

 縄文人とは、縄文時代の住人ということです。縄文時代は約一万年もつづき、縄文人は、北は北海道から南は沖縄にいたる日本列島の全域に住んでいました。したがって、縄文人骨にも、年代差や地域差が当然ありますが、全体として縄文人としての共通する特徴も認められます。 

 縄文人の身長は、160センチ以下と低く、全体平均は男性で約159センチ、女性で約149センチです。骨格は、全体として頑丈で、筋肉がよく発達し、腕力・脚力とも優れていたことを示しています。

 頭はやや丸みを帯びていますが、これは頭骨の幅が大きいことによります。また、頭蓋骨の高さも大きいので、古墳時代など後の列島の住人と比較して、大頭でした。

 顔は横幅が広く、頬骨も左右に張り出し、顎のえらも発達していることから、顔全体が四角くごつい感じを受けます。そして、低顔であることから、鼻の幅は相対的に広くなっていますが、鼻梁が高いので、いわゆる鼻ペチャではありません。また、顎は上下ともよく発達していて頑丈です。

 歯は後の列島の住人と比べてやや小さく、歯並びの形はU字型で、上下の歯がしっかりとかみ合っています。上下の歯の前歯の先端が毛抜きのようにぴったり合うタイプで、これを鉗子状咬合(切端咬合)といいます。虫歯は北海道の人骨には少ないのですが、本州の人骨には比較的多くみられます。また、歯のすり減り方がはげしいことから、堅い食物を多くとっていただけでなく、歯そのものを皮なめしなどの道具として使っていたと考えられています。

 縄文人の寿命は、小林和正が縄文人骨235体の推定死亡年齢をもとに、15歳児での平均余命を求めたところ、男は16.1歳、女は16.3歳という結果がえられたということです。これは15歳まで生きた縄文人は、男女とも平均30歳のはじめに寿命を全うしているということです。なぜ、縄文人の平均寿命(0歳児であと何年生きる)を求めないかというと、子供の骨がもろくて残りにくいために、比較的残りがよい15歳以下の人骨を分析の対象としているからです。ですから、縄文人の平均寿命となると、もっと短く、10歳代前半ぐらいではないかと推定されています。ただし、人類の最大寿命は120歳ぐらいですので、当然、縄文人でも長寿の人はいます。なお、最大寿命は、生活環境が改善された現代人でも延びてはいません。

 縄文人の祖先はというと、日本列島に居住した後期旧石器人ということになります。では、後期旧石器人はというと、人骨の発見例がきわめて少ないので、縄文人骨から逆にたどるという方法がとられています。最新のミトコンドリアDNAの分析では、朝鮮・中国・シベリアに縄文人と同じ遺伝子をもつ集団が多くいるとという見解が示されています。

(参考文献)

勅使河原 彰「縄文人の素顔」『縄文時代ガイドブック』新泉社2013年